もう一つの日記

 

第五週(前半)

 

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1月8日(水)

流空さん。最近やっぱり寒いですよね?

僕は今、季節を感じている余裕がありませんけど。

こんばんは。直治です。

 

昨日は結局、紗耶は自分の仮説について何も僕に話してくれませんでした。

なんだか、変になる前の健次のようでした。

もう少しで分かる、といって結局、おかしくなってしまった健次。

紗耶は大丈夫なのでしょうか?

しかし、僕もこのままだまって指をくわえて待っているだけではありません。

昨日、無いなりの知恵を絞って必死で考えました。

結論からいいましょう。

健次と円花、それに部長、実咲さんは全員催眠術師と顔見知りであり、彼らはみんな術にかかっている。

そして、その人はみんなから絶大な信頼を得ている。誰であるかは分からない。

みんなは占い師のことについて語ることを禁止された。

もちろんそれも催眠術である。

僕が直接会ったあの占い師が、黒幕だとばかり思っていたが、そうじゃないかもしれない。

あれも、催眠術によって操られた人物の仕業かも知れない。

黒幕は他にいる。

そう。多分、狙いは僕なんだ。

 

今日は少々変わったことが起きました。

授業中、先生が倒れたんです。教壇に倒れこむように。冴子先生です。

そのまま、授業は中断され、冴子先生は保健室に連れていかれました。

大丈夫でしょうか?

 

部活も通常どおり行われ、今日は何事もなく帰ってこれました。

紗耶とも占い師、いや、催眠術師についての話はしませんでした。

僕も、もう少し自分で考えてみたいと思います。

 

 

 

1月9日(木)

多分、わかりました。

あとは犯人が誰か、ということです。

 

僕の考えを言いましょう。

僕が直接会った占い師は、黒幕ではありません。

黒幕は他にいます。

全然別の人だと思います。

「直治君が直接会った占い師。実咲さんかもしれない」

紗耶は、多分そのことを言いたかったんだと思います。

あの占い師も、催眠術にかかっていたんです。

健次はそれに気がついた。

犯人の目星もついたのかもしれない。

僕に真相を話そうとした日、アクシデントが起こった。

催眠術師に呼び出されたのです。

健次のよく知る人物からです。

占い師になりすました動機を話すから、直接会って話がしたい。

そんなところだと思います。

健次も、化けの皮をはがそうと、警戒していたに違いありません。

しかし、健次は逆に返り討ちにあってしまった。

それは、おそらく指定された場所にたどり着く前に、電話をかけてきた人物とは違う人物に会ったからです。

その人物こそ本当の催眠術師だったのです。

電話をかけてきた人物は・・・・・円花だと思います。

円花は既に催眠術にかかっていて、健次に電話をかけるように仕向けられていたんです。

だから、健次は円花が占い師(催眠術師)だとばかり思った。

そう。これこそが先入観だったのです。

途中で出会った人物は、自分も電話で呼び出されたと言い、しばらく二人で話をしていた。

健次の気が緩んだリラックスした瞬間だったのでしょう。

その人物の手により簡単に催眠術にかかってしまった。

一般的に催眠術とは術師も被術者も合意のもと行われ、

術師がゆっくりと喋り被術者の潜在意識に働きかけを起こすものですが、

術師が被術者と世間話をしながら、時間をかけ、徐々に潜在意識に語りかける方法もあるそうです。

どちらも、被術者がリラックスした状態でなければなりません。今回は後者で催眠術にかかったんでしょう。

催眠術師についても占い師についても、この事件に関することの全てを直治に話すことができない。

それが、催眠術師の使ったトリックだったのだと思います。

全ての人間を信用するな。

彼の言葉であるが、本当にその通りだったんです。

円花が犯人だから、この人物は犯人ではない。

そう思ったから健次はやられてしまったのです。

どうして電話役が円花であると思ったかというと、彼女が僕と親しかったからです。

占い師(催眠術師)の狙いは僕、ということを健次は分かっていたわけですから、

僕に催眠術をかけることが容易な人物、つまり親しい人物が催眠術師であることも分かっていたはずです。

それを逆手にとって、占い師は円花を電話役に用意したわけです。

健次に納得させるために。

円花がどこで催眠術にかかったのかはわかりません。

でも、それはたいした問題ではありません。

問題は、実咲さんと部長がいつ催眠術にかかったのか、ということです。

これは非常に大きな問題となってきます。

なぜなら、実咲さんが僕と会う前から催眠術にかかっているとしたら、彼女は先日のように色々と口篭もるばかりだったはず。

部長もそうです。

でも、だとしたら、一体いつから占い師や催眠術のことについて口篭もるようになったのか。

先日実咲さんにあったときは、キーワードをペンで記すこともできなくなっていました。

年賀状には占い師の文字が数多く並んでいましたし、キーワードとなりそうな単語だっていくつか出てきていました。

確かに、「催眠術」に関する記述は一切されていなくて、僕にヒントを与えるような内容であったことは認めます。

しかし、どうして自分の身元を隠してそのような手紙を僕のところへ届けたのか、わかりません。

僕に事件を解決して欲しいなら直接、会って話せることを話せばよいわけです。

それが出来なかったということなのでしょうか?

すでに催眠術がかかっていた?

そうでしょう。その時点では既に催眠術がかかっていたと考えるのが妥当です。

一通目の手紙が分かりません。

あれも実咲さんの仕業であることは明白です。

あの手紙も「催眠術」についての記述はありませんでした。

でも、内容が理解に苦しみます。

どうみてもあの内容は、事件に首を突っ込むな、という内容でした。

彼女が占い師でもないのに?

なぜ、そのように書き記したのでしょうか?

実咲さんはあの時点では催眠術にかかっていなかったんじゃないでしょうか?

そして、既に占い師の正体も知っていた。

知っていてわざと、催眠術について書かなかった。

どういうことでしょうか?

ちょっと待ってください。

そうだとすると、一番最初に部長と実咲さんが僕に証言したことはどうなるんでしょうか?

占い師について語ったこと。

「こうしなければ、どうなるのか、を占い師が言った」という証言です。

あれは何だったんでしょうか? 芝居? それとも本当に占い師に遭った?

ひょっとして・・・・・・・・実咲さんは占い師をかばってる?

 

今日、学校では変な噂が流れていました。

冴子先生が妊娠しているという噂です。

噂の発端となったのは昨日のあの倒れ方のせいだと思います。

あれはつわりだったのだ、とどこからともなく噂が広まったみたいです。

今日、冴子先生は休みのため、国語の授業は自習でした。

きっと今日は病院に検査しにいったんだよ。そんな声すら聞こえてきました。

冴子先生。大丈夫かなぁ。

都知事もこんなところで悠長に授業している場合じゃないだろうに・・・。

今日、部長は部活に出ていませんでした。体調でも崩したんでしょうか?

部活の帰りがけ、健次が待っていてくれたのに気がつきました。

そういえば、新学期になってこうして健次と帰るのは初めてかもしれない。

紗耶とか良則としか最近は帰っていませんでした。

ちょっとした世間話をした後、帰りの電車の中で健次は意外な一言を言いました。

「紗耶と俺が付き合ってるのが嘘だって、気がついただろ? どうしてあんなこと言ったかわかるか?」

事件のことについて口を閉ざしてきた健次が、重々しい口調で言ったのです。

「紗耶ならどうにかなるかと思ったんだ。」

やはり、そういうことだったようです。

「それにナオジが・・・・。」

「ん?」

「・・・・。ごめん、なんでもない。分からないならいいんだ」

何かまだありそうでしたが、結局話してくれません。なんて言おうと思ってたんだろう・・・。

彼の口から占い師、催眠術、事件、犯人、などそういった言葉を聞くことはできませんでした。

おそらく、事件のことを意識すると喋れなくなるような制限が、催眠術によって施されているのでしょう。

健次が「俺は、紗耶と付き合っている」といえば、僕がいずれ確認を取るだろう、と考えて僕にそういったに違いありません。

きっとそれは、円花との話し合いで決まったことなのでしょう。

催眠術にかかっていなくて、信頼のおける人物。

そして、事件を解決まで導いてくれる人物。

円花と健次は、僕を救うために、円花の気の許せる人物紗耶と接触させようとした。

そして、健次たちが考えたように僕は紗耶と接触し、事件についての話を彼女にした。

こんな回りくどいことをしなければいけなかったのは、全て、表現が制限されていたためだろう。

「うん。分かるよ。大丈夫、きっと解決させてみせるから」 と僕。

健次は苦笑いをしていました。喋れないのがよほど苦しく、悔しいのでしょう。そして、事件解決への不安。

健次の怪我は、ほぼ完治していました。

部活に普通に参加していたほどですしね。

 

家に帰って、家族みんなで食事をとった後、同じ高校に通っている姉に聞かれました。

「あんたの学年の冴子先生ってさぁ。結局どうなったの? おめでたの噂が流れてたけど。相手はもちろん裕次郎先生?」

嬉しそうに尋ねてくる姉。

「さぁ。おめでただったら、都知事もあんなに落ち着いて授業してられないでしょ。多分違うと思うけど・・・。」

こういう噂話が大好きな姉。結局1時間近く話をさせられました。

まったくもぉ。近所のおばさんかよ。

 

自分の部屋に帰ってきてからもう一度、考えてみました。

健次、円花、紗耶は少なくても術をかけた人物ではありません。

まさか、実咲さんか部長?

いや。そうじゃありません。

健次は実咲さんとは初対面のはずなんです。

催眠術は信頼のある人で、しかもリラックスした状況でなければかけられません。

つまり、初対面の実咲さんが健次に催眠術をかけることなんて、まず不可能である、ということなんです。

それに、実咲さんが催眠術師だったら、僕に事件の解決を手紙で急かすような真似は絶対にしません。

え? じゃぁ、部長?

そういえば、考えてもみていないことでした。

部長が犯人・・・・。

ありえなくはないです。

実咲さんと部長は最初から付き合っていた。

そして、部長は僕に占い師の存在をアピールする。

実咲さんに協力してもらい、その信憑性を高めようとした。

さらに、健次も占いどおりになり、円花も・・・。

実咲さんが占い師をかばったのも、そういう理由だったと考えることができます。

紗耶が言っていた 「直治君が会った占い師は実咲さんかもしれない」 という発言も、それなら理解できます。

いや、しかし、何かが引っかかる。

そうか。

円花だ。

円花はバレーボール部。

テニス部部長を知らない。

催眠術になんかかからないんです。

だとしたら、一体誰が催眠術師なのか?

それに、やっぱり何かが引っかかります。

それが何かわからないのが致命傷です。

 

はぁ。書き疲れました。

明日はもう少しまともな話が書けるでしょうか?

明日、紗耶と話します。

絶対、早く決着つけてやる!!

待ってろよ。催眠術師よ。

 

 

 

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