もう一つの日記

 

第ニ週(後半)

 

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12月22日(日) 

大変です。健次が呪われてしまいました。一大事です。

 

健次は予定時間より少し遅れて、駅に登場しました。

行きの電車の中で昨日のことを話しました。

健次は考え込んで、首を傾げていました。

「妙だなぁ。美咲って人も占い師も妙なんだけど、部長がどうも気にかかるなぁ」

「どうして?」

「うーん。昨日入ったカフェレストランは、直治は初めてだったのに対して、部長は初めてじゃなかったんだよなぁ」

「え? そうなの?」

その質問をすると、健次はきょとんとした顔で僕を見つめて、その後溜め息をつきました。

「あのなぁ。メニューも見ないでとり五目注文するような人が初入店だと思うか? 前に一度来ているはずだよ、その店。

どうして疑問に思わないかなぁ。誰と来た、とか。いつ来た、とか。」

「・・・・・言ってる意味が良くわかんないんだけど」

「疑わしいのは占い師とか美咲さんとかじゃなくって、部長の方だってことだよ。

そもそも、そんな占い師がいたかどうかも怪しいだろうが。部長の話だけだろ? 実際に直治が見たわけでもない。

テニス部部長で靴を買いに来ているところまで、ぴたりと当ててしまう占い師なんて聞いたことあるか?

彼の証言だけで何の確証もない。これじゃぁ信用しろって言うほうが難しいだろ。

直治が会った美咲って人も、実は部長の仕向けた人で名前も「美咲」じゃなかったのかも知れない。

だから、結局のところぜんぜん分からないって事だ。

とにかく気にしないことだな。

部長が風邪引いたこと以外、大したこと起こってないんだから」

そんな会話をしているうちに、電車は目的の駅に到着しました。

昨日歩いた道を通りながら、僕たちは服や靴のショップをめぐりました。

いい靴があったけど高くて買えませんでした。もっとお金を持ってくればよかった、と後悔してます。

健次は黒いジャケットを買いました。よく似合ってます。悔しいです。

ショップから出るたびに寒い思いをします。雑貨屋さんに入って彼は何か買っていました。

何を買ったかは教えてくれませんでした。残念。

その雑貨屋を出るとき誰かに見られていたような気がしましたが、振り返ってもこちらを見ているような人は見当たりませんでした。

 

どのくらいの時間が経過したかわかりませんが、暗くなり始めたので帰ろうと、昨日の通りを歩いているときでした。

道の端にいました。

占い師です。

黒い布で覆われた小さなテーブルと椅子。占い師は頭にも布を被っていたせいで、よく顔が見えませんでした。

女性であることだけは確認できますが、若いのか年輩なのかは布のせいで微妙に分かりずらかったです。

部長の言っていた占い師かどうか分かりません。確かめる方法は一つです。

怖かったんですが、僕は健次に言いました。

「占ってもらおうよ」

健次も頷きました。同じことを考えていたようです。

近くまで行った時、話し掛けられました。

「こんにちは。占いはいかがですか?」

「・・・あ、はい。お願いしたいんですが・・・。おいくら程に・・・」

「お金は要りません。あなたが満足したとき、お金を払いたいという気持ちがあればまたここに来てお支払いください」

あまりの怪しさに怖くなって、健次の手を取って帰ろうとしました。

しかし、何を思ったのか健次はその手を振り払って、占い師の向かいの椅子に腰掛けました。

「お金はいらないんですね? じゃあ、俺を占ってください。俺のこと占えますか? 直治でなく、俺を。」

どうしてそんな言い方するのか分かりませんでしたが、とにかく健次の行動を見守りました。占い師が言いました。

「もちろん占えますよ。あなたは彼のお友達ですからね。

彼が心配になるのも分かります。

私のことを疑っているんでしょ? いかさま占い師じゃないかと。

先輩の話が嘘だと思い、しかし、目の前に現れた占い師。

友達に悪い予言を残し、彼を不幸にさせようと企む占い師。

頭のいいあなたは考える。どうすれば良いかを。

そして、自分が犠牲になることを選んだ。

このいかさま占い師を暴くにはそれしかない、と。

フフフッ。あたりですか? 顔色が思わしくないようですけど。

占って差し上げてもいいですし、そうでなくてもいいですよ」

健次は即答でした。

「いいから占ってください」

「・・・・・・・・。分かりました。ではいきますよ」

そういうと、その人は水晶を取り出し、両手をその水晶の上に転がして、占い始めました。しばらくした後、こう言いました。

「でました。明後日、あなたの身に不幸が訪れます」

 

心配です。健次は大丈夫だから、とかいって取り合ってくれなかったけど、絶対に不幸が起こるような気がします。

一体何者なんでしょうか。明後日っていったら、24日。クリスマスイヴじゃないですか。

どうしましょう。大変です。

どうなってしまうんでしょうか。心配で眠れそうにありません。

 

 

 

12月23日(月)

今日、美咲さんに会いました。昨日に引き続き大変です。

明日は楽しみなクリスマスパーティーだというのにどうしたものでしょうか。

健次はどうなってしまうのでしょうか。心配です。

 

今日は、夕方まで家から出ませんでした。

午後に健次のところに電話をしました。健次は

「大丈夫、俺は占い信じない人だからな。第一、部長には通じても俺には通じないだろうから心配要らないって」

と、余裕のコメントを残していましたが、既に部長のことがあるので心配です。

健次のことだから何か考えがあってのことでしょうけど、僕にはさっぱり理解不能です。

夕方になり、家からさほど離れていないコンビニまで足を運びました。寒かったので防寒対策はばっちりで行きました。

ホットのお茶とおでんを買って家路につきました。

その帰り道のことです。

一人の女性が歩道中央で立ち止まっていました。この前、体育館で会ったみさきさんです。

「直治君? だよね?」

戸惑いました。というより、パニクってました。

何でみさきさんがこんなところにいるんでしょうか。何しに来たんでしょうか。

どうして俺の名前を知っているんでしょうか。この人一体何者?

頭の中を疑問符が支配していましたが、とりあえず彼女の質問に答えました。

「はい。そうです。僕が直治です」

すると、みさきさんは安堵の表情を見せました。

「そっかぁ。よかったぁ」

立ち話もなんだから。といって彼女は僕を近くの公園に連れて行きました。

何かされたらどうしようか、と心配しましたが、別段何もされませんでした。取り越し苦労です。

公園には人がたくさんいます。何かできるわけないです。

その公園のベンチで話をしました。

話をして少しだけ謎が解けました。

彼女は「実咲」という名前だそうです。「美咲」ではありませんでした。

なるほど。部長がいくら探しても「美咲」を見つけられなかったわけです。

実咲さんは同じ高校の2年生です。

つまり部長と同い年です。クラスは違いますが。

事情を聞くとはっきりしました。

なんと、彼女も占い師に会っていたんです。街に買い物に行ったときのことです。

実咲さんも、部長と同様、占い師に呼び止められたそうです。

「華道部の仕事も大変ですねぇ」 と。

実咲さんの部活は華道部です。華道部部長ではないですけど。

その言葉に信用をしてしまったらしく、実咲さんは未来を占ってもらったそうなんです。

「あなたの学校に男子テニス部がありますね? そのテニス部部長に会いなさい。彼があなたの運命の人になるでしょう」

占い師は、そう言った後に、更に

「直接会うと運気が下がるので、テニス部員に紹介してもらうのがいいでしょう。「直」の字がつく人がいるはずです。

その人に頼んでみるのが一番いいでしょう」

確かに僕は「直」の字がつきます。

実咲さんはその占い師のことを信用しきっていたため、自分の目でテニス部のところまで来て、確認したそうなんです。

部長に一目惚れしたらしいです。ありえません。かっこよくないんです、部長。

そこで、僕のことも調べて、近づくために僕が一人になるチャンスをうかがったそうです。

それがあの体育館でのことだそうです。

しかし、部長は休みだということを知ったので、またの機会にしようとしたらしいんですが。

彼女は今日、部長に会いたい一心で僕のところを訪れたそうなんです。わざわざ住所調べて。

かなり惚れ込んじゃっています、実咲さん。僕には理解不能です。

第一、そんなに会いたければ、直接会いに行けばいいのに。

クリスマスプレゼントも買ってあると言いました。一目惚れでそこまでしちゃうんですか。やはり理解不能。

仕方がないので、25日に部長と会わせるという約束をして話を終りました。

帰ってから部長に電話で説明して、了解を得ました。部長も実咲さんを不信に思っているようです。かなり警戒しています。

 

夜、明日のクリスマスパーティーのことを聞くために良則に電話しました。

夕方5時から良則の家にて開始だそうです。

健次のことが気がかりですが、今日はもう疲れたので何も考える気がしません。

明日、パーティーへ行く前に健次に話そう。何かわかるかもしれませんし。

とりあえず、今日はおやすみなさい。

 

 

 

12月24日(火)

クリスマスパーティー自体は何事も無く終りました。

しかし・・・。占い師の言ったことが当たってしまいました。

 

午前中に健次の家に行きました。

昨日のことを話すと、

「そうかぁ、ますますあの占い師、怪しくなってきたなぁ」

と言っていました。他にも色々と何か僕に話してくれたんですが、難しすぎてよく覚えていません。

それから夕方くらいまで、健次の家でネットゲームをしていました。

夕方になり、良則の家に向かいました。

クラスの男子女子が20人も集まって、大盛上がりでクリスマスパーティーが行われました。

良則の家には本館の他に別館があり、今回はそこで騒がせてもらいました。

さすがは父上が歯科医院の医院長だけありますね。別館をお持ちとは・・・。

しかもカラオケ付きだなんて。僕の家もそのくらい裕福だったらなぁ。と、思う今日この頃です。

豪華な料理をいただき、色々なゲームで楽しみ、クラスメイトと有意義な時間を過ごしたクリスマスイブ。

何事もなく終ると思ったのに、そうはいきませんでした。

帰りがけのことです。

パーティーが終わり、良則の家を出て健次と一緒に道路を歩いているときでした。

そこには歩道と車道の区別がありません。

対向車が来ました。様子がおかしいです。ライトが見えます。こちらに向かってきています。

避けようと思いましたが、あまりに急スピードで突進してきたため、足がすくんで動けませんでした。

ヤバイ、当たる。と思った瞬間、僕は目を瞑りました。

光は去っていきました。僕は無事でした。目を開けると、車はありません。

振り返ると、走り去る車の姿がありました。

ふと、健次を見てみると、彼は地面に倒れていました。

先程の車に轢かれたんです。

「おい! 大丈夫か」

健次は痛々しそうな表情を見せながらも、作り笑いを僕に見せて言いました。

「俺のことなら心配要らないって。それより、ナンバー確認できたか?」

僕は目を瞑っていたため、ナンバーを確認している余裕などありませんでした。

黙っている僕を見て、健次は残念がっていました。そしてこう言いました。

「くそっ。あの占い師め。やってくれるじゃねぇかよ」

そうだった。占い師の言ったことが当たったんだ。

僕にはそう考えるのがやっとでした。

 

健次はその後、救急車に運ばれて病院に連れていかれました。

僕もついていきましたが、健次は右腕の骨折と右ヒザの軽い打撲だと診断されていました。

全治三週間だそうです。入院はしなくていいそうです。

どうやら大事には至らなかったようで、少し安心しました。

健次は僕に言いました。

「明日、実咲さんと部長を会わせるんだろ? だったら俺もついていっていいか? 大丈夫、俺は隠れてるから」

占い師が怪しいのはさすがの僕にも分かります。

でも、何で実咲さんと部長の対面についていこうだなんて思ったんでしょうか。

健次は、「まだ確証がないから話せない」 としか言ってくれません。

それより健次は今のところは安静にしていたほうがいいと思うんですが、

当の健次は

「それじゃあいつの思う壺なんだよ」

と、訳の分からないことをのたまわっています。

困ります。早く治して欲しいのに。

病院に連絡してくれた良則が、後から健次のもとにかけつけてくれました。

「歯医者じゃなければ俺のところで、診断とか治療とかできたんだけどな」

と言っていました。

その後、警察が来ていろいろと事故の状況を説明させられました。

非常に疲れました。

警察が帰った後、僕と健次は、良則のお父さんの車で家まで送ってもらいました。

とにかく、遠くから見守るという条件のもと、明日健次も連れて行くことになりました。

 

せっかくのクリスマスイヴだったのに、最悪な展開を迎えてしまいました。

明日はどうなってしまうんでしょうか。

大したこと起こらなければいいんですが。

何か嫌な予感がします。心配です。

おやすみなさい。

 

 

 

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