もう一つの日記

 

「翔馬の日記」番外編

〜もう一つの話〜

 

 

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  翔馬と真奈美が控え室前の廊下に戻ると、先程の面子に加えて、裕二と由香里もいた。

「あれ、お前たちも来てたのか」

 とぼけた調子で口を開いた裕二に、翔馬は無言でボディブローを見舞う。

「ぐはぁっ!」

「わ、裕二! 翔馬、酷いよっ」

 大げさにもだえる裕二と過敏に反応する由香里。確かにお似合いかもしれない、と翔馬は思った。

「お前が相変わらず一言多いからだ。真奈美に余計なこと吹き込むんじゃない」

「うう、何のことだぁっ?」

 前に服を買いに言ったときのことだ、と説明しようとしたが、翔馬はすぐにあきらめた。 悪気は無いのだから、責めても仕方がないだろう。もっとも、だからなおさらタチが悪いのだけれど。

「さて、どこかに打ち上げに行こうか?」

「お、良いね」

「え、私たちがいても良いんですか?」

 彩奈の遠慮がちな質問に対してにこやかに頷くバンドの面々。

 宏一が人当たりの良い人物だというのは翔馬もよく心得ていたが、類は友を呼ぶものらしい。

「そうだ、その前に、せっかく皆そろってるんだし」

 そう言って、裕二はバッグからデジタルカメラを取り出した。

「もう、ほんとーに好きだよね、裕二は」

 由香里は裕二を見て苦笑しながら言った。

「まあまあ。文化祭の記念写真なんて、悪くないだろ?」

 裕二は由香里に答えてから、真奈美を見る。彼女は大きな目を瞬かせた後、裕二に向かってピースサインをした。

「じゃあ、2枚焼き増ししてね」

「それを言うなら印刷じゃない?」

 訂正する悠菜に、真奈美は無言で頷く。翔馬は、彼女がわざと言ったのを知っていたから、何も言わなかった。

 彼女がずっと持っていたあの写真。翔馬と由香里が写っていた、高校の思い出。

 もちろんそれは翔馬にとっても、恐らく真奈美にとっても大切な過去。

 けれど、それはそれ。

 翔馬の隣にいるのは、あの時とは違う。

 真奈美は、翔馬の耳元で囁いた。

「1枚は、私の分。もう1枚は――」

「お姉さんの分、なんて言わないでくれよ」

「言わない。もちろん、貴方の分」

 真奈美は、それこそずっと残しておきたくなるような、とびきりの微笑みを浮かべた。

「今度は、無くさないんだから、ね」

 

「翔馬の小説」

 

 

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